霊峰富士 (雪の富士山制覇 本編)

いよいよ雪の富士山に立ち向かう。何年も頭で妄想登山し続けてきた計画。風さえなければ勝機はある。

先日の「登山経験のない東京高2、軽装・長靴で雪の富士山に単独登山。7合目で動けなくなり、携帯で母親に救援要請」の話。当然ネットでは「無知すぎて怖い。。」とか「雪の富士山をナメてる」とか「山を知らない素人さんはこれだから困るなぁ」など、ボコボコに叩かれた。全くその通りである、しかし、この少年の冒険心だけは褒めてやるべきである、ある意味うらやましい馬鹿さ加減である。許されるのは今だけである。チャレンジを評価するといいながら、失敗すれば糾弾され、責任をとらされるという合理的で不条理な社会に出る予行演習だと思えばいい、と、後述のクレイジーなお姉ぇーさんと語り合った。Anyway、男の子には冒険が必要である。

西白塚駐車場から。ここの道を通るといつも寄る、富士山の全貌を間近で見れる最後のポイント。さびしい独り旅なので誰も相槌を打ってくれないが、終日何度も口ずさんだ言葉がある。。。。それは「富士山デカっ」
GW前日冬期閉鎖が解除されたスカイラインの18:30夜間閉鎖前にゲートをくぐる。ちなみに18:30を超えても。。。。ゲートは手でどかせれる(らしい)。そんなこんなで5合目を目指す。
2016yukifuji01


越前岳に登った時うれしいことがあった。今年初のでっかい入道雲。「夏男」で検索すれば上位5位にヒットするであろう私。夏の象徴である入道雲大好き。スカイラインを登ると、その入道雲が横に見える。なんかうれしい。
2016yukifuji02


5合目着。先着20台くらい。予想以上に多い。
晩飯は赤いきつね。気圧差でパンパン。ふたを開けると「ポンッ!」と弾ける。山メシの定番カップ麺は、飽き飽きしているのでほとんど食べないがしょうがない。ちなみにどん平衛は数年前の商品改良で明らかにおいしくなくなったため、それ以来赤いきつね派。
2016yukifuji03


夜景が眺望できる静かな場所に移動。みんな知らないが5台分くらい2400mからの夜景を独り占めできる場所がある。見上げれば信じられないくらいの星、見下ろせば絶景夜景に挟まれ、21:00就寝。
2016yukifuji04


熟睡できず、何度も目が覚め、4:30起床し、登山口横に戻る。活気づく山バカ達。トイレを済ませ、歯を磨く。口が気持ち悪い状態でこの山に挑みたくない。というものの、しまむらで買ったパンツを履き替えるタイミングを失い、同じパンツ三日目でした。
(これ以降の写真は夜景モードのままだったので色がイマイチなのはご容赦)
2016yukifuji05


登山口は「冬期閉鎖」とバリケードされているが、山バカには温泉街の「歓迎」の看板にしか見えない。無事ピークハントできるのか、生きて還れるのか、胸の高鳴りを抑えられない。こんな危険好きに産んでくれた母親に感謝し、アミノ酸を流し込み、ピッケル片手に、5:30バリケードを突破。
2016yukifuji06


ひたすら続く、退屈な溶岩道を無言で登る。宝永山に朝日がかかる。寒くて汗は一滴も出ない。とにかく終日晴天であることを祈る。しかし、この祈りが通じることが、後の惨事につながるとは全く予想せず。。。
2016yukifuji07


6合目ぐらいから断続的に雪。まだノーアイゼン。
2016yukifuji08


元祖7合目山小屋の屋根に座りアイゼン装着。ここまで寒くて汗は一滴も出ず。微風で体調よく楽勝モード。本日は晴天なり。
2016yukifuji09


8合目で会ったスキーを担いで登ってきた関西弁のお姉ぇーさん。毎年お父さんと頂上から滑降する山スキー親子とのこと。ガチガチの雪質にも「こんなん大丈夫ですよ」と。かっこぇぇ。スキー、ボードを担いだ人がチラホラ。
2016yukifuji10


感動的なフジヤマブルー。ここ8合目3,250mまで2時間40分(8:10)、いいペースであるが、かなりバテ気味。8:10と言えば、いつもは通勤地下鉄で登山道を研究している時間である。ピッケルは3cmぐらいしか立たないガチガチ雪。さぁ、遊びは終わり。ここからリアル地獄の始まり。グローブを極寒用に変え、アミノ酸2袋目を流し込み、気合いを入れ直す。雪が眩しい。あっヤバイ、ゴーグルもサングラスも車に置いてきた。
2016yukifuji11


9合目3,460m(9:30)。更に磨きがかかるフジヤマブルー。頂上近づいたがまだまだ。登れば登るほど酸素は薄くなる。頭もぼーっとしてきて、呼吸も乱れっぱなし。究極のハァハァゼイゼイの世界。10歩毎に止まって呼吸を整える。
登れば登るほど風も強くなり、直前ダイエットに失敗した75kgの身体でさえ飛ばされそうになる。強風が吹くと、とっさに固い氷面にピッケルを打ち付けねじ込み、片膝立ちで身体を低くして、数分ブリザードが止むのをじっと待つ。氷粒がバチバチ顔に当たって痛いが、目をつぶってしまうと平衡感覚なくなり滑落するため、薄目で耐えるしかない。そんなブリザードを何度も凌ぎながら歩を進める。この日の天候はかなりの好条件であるが、それでもさすが富士山である。なぜこんな厳しい気象になるのか未だに解明されていないらしい。
2016yukifuji12


9.5合目3550m。もうヘロヘロ、体力の限界。立ち休みの間隔も10歩以下になっている。「行く?無理せず辞めとく?」、進退を自己に投げかける。返ってきた答えは「登り切ってみせる!」。
ちなみに最近のピッケルは50cmのフック型が主流だが、私は昔ながらの70cmストレート。
2016yukifuji13


フジヤマブルーは最高潮。白銀が目にグサグサ突き刺さる。腹をくくったので、日本一の厭世家も前向き。敗退はない。
2016yukifuji14


目視で頂上鳥居確認。この辺りは発狂しそうな位しんどい。鼻水とまらず呼吸制御不能。5歩毎に立ち休憩。すぐそこに見えているのに1時間を要する。全然進まない。エベレスト無酸素登頂する登山家は信じられない。
2016yukifuji15


頂上が近づくにつれ、うれしさこみあげてくる。11:02 ピークハント。やったぁ。。。。グサッと勝利のピッケルを突き立てる。この写真を撮るために、死ぬ気で5.5時間登ってきた。
2016yukifuji16


精魂尽き果て、雪の上でゴローン。こんな達成感に満たされた山行は久しぶりだった。初めて猿投山様北壁を登り切ったときの感激以来か。
2016yukifuji17


浅間大社でパシャ。 写真のためフェイスマスクを外したが、凍える寒さ。気温はマイナス10度くらい。風は10mぐらいなので体感はマイナス20以下。極寒用グローブでも指先の感覚は弱い。
2016yukifuji18


今日は剣ヶ峰より行きたいところがある。
2016yukifuji19


誰もいない三島岳(3,734m)へ。これでも登るの結構大変。氷と雲上の世界に独り浸るも、強風で凍え死にそう。
2016yukifuji20


続いて浅間岳(3,722m)へ。
2016yukifuji21


今日の足ぶらり。落ちたら大内院へ急降下。このスリルがたまらん。
この状態で飯を喰うが、既に新鮮な酸素をたらふく吸っているため、全く食欲なし。おにぎりも半分凍っており、喉を通らない。ここまで水分もほとんど摂っていない。
2016yukifuji22



下りたくないが13:00下山。登山の無情。
2016yukifuji28


大嫌いな富士山下山だが、雪山下山となればお手の物。バテバテの登りで抜かれた人数の3倍以上ぶっこ抜いてあっと言う間に7合目。
2016yukifuji23


夏道溶岩道はキツイし全く面白くない。宝永山が見え出すと一安心。
途中から、福岡から一人で登りに来たお姉ぇーさんと一緒に下山。下山後、このまま奥穂に向かうという。利発で、愛想がよく、長身で、歯がきれいで、好みではあるが、こんなクレイジーな女性をかみさんにはできないと思った。
2016yukifuji24


昨日登った愛鷹山群を見ながら、16:00駐車場到着。クレイジーなお姉ぇーさんと「また、どこかで!」と惜別の言葉を交わし、車に乗り込む。
出会った女性のことばかり記載しているので、「なんだ、女性も結構登ってるじゃん」と錯覚することなかれ。女性はほとんど登っていない。女好きが書く記事をまともに捉えてはいけない。
2016yukifuji25


下界に戻ってきてしまった。。。。高度が下がる度に、「ピキッ、パキッ」と音を立ててくびれたペットボトル。
2016yukifuji26


ようやく減ってきた腹に「何が食べたい?」と聞くと、「あさばー」との返事あり、辿り着いたのは富士山がよく見える中華料理屋。
おばちゃんに「富士山よく見えますね、今登ってきたんですよ」と言うと、「またまたウソばっか、雪あるから登れる訳ないじゃん」と笑われたが、雪焼けした顔を指さすと納得してくれた。
2016yukifuji27


鷹の湯に戻り、ジェットバスでマッサージ。筋肉痛もなく、体力的にはもう一回登れと言われればいけそう。三連投目雨ケ岳へ向かうか考えるも、鼻水が止まらなくなったのと、車中泊が辛くなってきたので帰名を選択。車中もくしゃみ連発。

帰路は順調だった。長篠までは。。。運転中に急に前の車がかすれて見えることに気付いた。右目も左目もおかしい。そのうち、視野全体が白く覆われ、全てのものが二重に見え、ライトが膨張して眩しく、目を開けていられない状況に。白内障の手術をした母親から聞いた症状と同じである。ヤバイ、危険好きだが嫌いな危険な状況。終日無防備な状態で白銀の世界にいたため、目が焼けたのである。「帰れるのか。。。」と味わったことのない恐怖と闘いながら、何とか家に辿り着き、速攻で就寝。

翌日も目は回復せず、開けていられない状況。どうしよう治らなかったら。。。
医者はやってないし。。。。とりあえずサングラスをして猿投山様に登った。
GWらしく家族連れで賑わっており、たくさんの「すいません、シャッター押して頂けますか?」に応えるために。
夢を叶えるための犠牲が失明ではシャレにならない。このブログを仕上げるのも、超大変だった。馬鹿はどこまで行っても馬鹿である。

(2016/4/30)

後記
三日目で目はほぼ回復したが、焼けただれた顔は皮ベロベロでフランケン。街にいるとジロジロ見られて恥ずかしいので、中アにでも登って来よう。

コメント


管理者のみに表示