中央アルプス 2016冬 敗退

庭の梅が満開である。ヤバイ、日に日に暖かくなっている。毎週猿投山様から周りの山をチェックしているが、明らかに雪が少ない今冬。雪山を抱きたい欲望に身悶えする毎日。「もうダメ、辛抱たまらん!」とアレの実施を決める。厳冬の3000mの世界を味わってみたくて1年前に目論んだが、12月に故障しいつ直るかと心待ちにしていたら、結局3月まで運休していた中央アルプスロープウェイ。今年はちゃんと動いていることを確認し、4:30に目覚ましセット。どんな世界なんだろう冬の3000mって。


目覚ましに頼らず起きた。。。。ありゃ6:00.。。無意識のうちに止めたか?ヤバイ、8:00の始発バスに乗れなかったら次便は9:00。中止しようか。。。いや、ブッ飛ばせば間に合う!と寝起きダッシュし、中アが輝く駒ヶ岳SAで速攻でおにぎり購入。
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7:30バスセンター着。既に長蛇の列。整理係が乗客数を数え、私の10人前で「ここ以降は、臨時便8:30になります」と。とほほ。
その傍らを、山岳警察の車がサイレンを鳴らし、猛スピードで駆け上がっていく。何かあったな。。。
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案内板には千畳敷の様子が書き込まれる。マイナス16度、積雪260cm。
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幸運にも始発に乗り込めた。出発直前に「お一人様の方いますか」の呼びかけに、授業参観の小1並みの速さで挙手し。最後の1席をゲット。
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補助席だったので、必然的に先に降車することになり、ロープウェイも前方位置ゲット。近づく愛しの宝剣。
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日本一高い駅に到着。表に出ると、青空に映える豪雪の千畳敷カールにうっとり。美しい。アイゼンを装着していると、滑落して救助された男性がタンカで運ばれる。命に別状はなさそうだ。屈強なレスキュー隊員がいかに大変だったかを語っている。
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さぁ、待ちに待ったセルフ拷問の開始。ザックザックと踏み分ける。雪は柔らかめで歩きにくい。すぐ汗ダクになり、前ボタン全開でほぼTシャツ。明るいのが苦手な私は、サングラスを外すと目を開けていられない。鈴木その子なんて比べものにならないぐらい白い世界。
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夏場はどうってことない八丁坂も、冬は道なくひたすら直登。先人のトレースを正確になぞる。どんどんキツくなる。みんな身体斜めのマイケルジャクソン状態。とにかく危ない。足場などない。のっこし手前50mはガチガチに凍っており、文字通り「歯が立たない」。一歩間違えば人間ボウリング通り越して人間雪崩。冬の3000mをナメていた。
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アキレス腱伸びまくりで何とかのっこし着。あまりの強風と寒さに「何、この世界!?」とびっくり。写真ではポカポカ陽気のラクラク登山にしか見えないのが残念。シャツのボタンを閉め、ゴーグル装着し、完全防寒スタイルに変身。千畳敷は山に囲まれ風は弱いが、ここは吹きっさらし。千畳敷とは別世界。強風で身体が持っていかれる。あまりの寒さと地吹雪で顔が痛い。痛いがどうすることもできない。耐えるしかない。もう雪山なんて易しいものでなく、ビュービュー、バッキバッキの氷の世界。とにかく前進。いつものように水筒は氷一杯の氷水。。。。間違っている。
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15時から天気は崩れる予報。先に宝剣に登っておくか悩むが、木曽駒を目指す。
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寒い寒い、痛い痛い。どうすることもできずにひたすら耐える。持ってきた温度計は機能せず、多分マイナス20度以下。写真を撮るためにグローブを外す。グローブに付いた鼻水も凍っている。グローブは注意が必要。落とした瞬間、遠くまで吹き飛ばされる。何人もがグローブと氷上鬼ごっこで負けていた、私も2回飛ばされたが何とか取り戻せた。グローブなしで、この寒さを凌ぐことは不可能。
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こんな氷の斜面登れるんかい?とシャレにならないほどガチガチに凍った斜面を登り切り中岳に着いた頃に天候急変。予報より早すぎる。頂上ではみんな強風で飛ばされないように踏ん張っている。とにかくすごい風。
と、絶叫が上がったと思ったら、強風に煽られバランスを崩し、氷面をものすごいスピードで谷底へ滑落していく若い男性がの姿が。25mぐらい滑落し、うつ伏せに体を入れ替え、ピッケルを突き刺し止まったが、ぞっとした。思わず「うわぁーーー」と叫んだ。目の前で現実に起こる「ファイト!一発!」の世界。すぐそこの木曽駒も悪天候で全く見えなくなった。もうダメ。あきらめて引き返すことに。
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ジェット機の爆音のような強風。




こんな状況で記念撮影もないが、とりあえずパシャ。シャッターを押してもらうのに、グローブを外してもらわなといけないのが申し訳ない。グローブ外すと10秒も持たない。
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のっこしに戻り、宝剣に登れるか計るが何も見えない。雪に埋もれた山荘の軒先で風を凌ぎながら、30分天候回復を待つが、ホワイトアウトは酷くなるばかりで、もう無理と撤退決定。
と、絶叫が上がったと思ったら、今度は女性が滑落する姿が。窪地で止まれて無事。
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戻るにも八丁坂の下りは恐怖。凍った急坂はヤバイぐらい危ない。絶対、ケガ人か下りれない人が出るはず。みんな超慎重なペンギン歩きで、先人の足跡通りに足を運ぶ。滑ったら最後、とんでもないことになる。
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とりあえず自分は無事なことに感謝し、見えない宝剣をバックにパチリ。ウォーマも髪の毛も凍っている。とにかくロープウェイ乗り場まで辿り着かなければ。
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下り途中、上が騒がしくなった。大声で叫びあっている。駆け下りてくる男性に聞くと、滑落・脱臼し動けなくなった人が出たので、レスキューを呼びに行くと。
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あとちょっとでロープウェイ乗り場だが、思うように進まない。13時前だがもう下山しよう。あまりに危ない状況につき仕方ない選択。
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乗り換えすんなりで14時に駐車場着。昨晩から何も食べてないことに気付き、まずはどん兵衛で暖をとる。帰りは走り慣れた153号をゆっくりとブッ飛ばし、平谷のお気に入りの温泉施設へ。湯舟につかりながら、「冬の3000mはあんなヘビーなんや、ナメていた」とつぶやくが、山登らーはバカだからすぐ忘れ、また登るだろう。

厳冬の3000m、それは想像以上に厳しい世界だった。天候が穏やかであれば、最高の眺望であったであろうが、あの強風とガリガリ氷では危険極まりない。本日知ってるだけで4件の滑落あり。山岳レスキューの人もやってられないだろう。本当に頭が下がる。
木曽駒も宝剣も辿り着けず、完膚なきまでに打ちのめされた敗退であったが、色々勉強になった山行であった。



(翌日2/28の山岳ニュース)
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2016年2月26日、27日、中央アルプスの日本百名山、木曽駒ヶ岳(2956メートル)で4件の遭難事故。道迷い1件、滑落3件。駒ヶ根署によると、2人を救助したが、3人は行動不能。28日早朝から、長野県山岳遭難救助隊らが捜索にあたる。

2016年2月26日午後6時14分頃、横浜市の会社員男性(58)が天候悪化で道に迷ったとホテル千畳敷で待つ妻を通じて救助要請。翌27日早朝から駒ヶ根署などが捜索にあたり、木曽駒ヶ岳北方で男性を救助した。顔、手足に軽度の凍傷を負い、低体温症の症状が見られるものの、意識ははっきりとしている。

2016年2月27日午後0時20分頃、京都府の会社員男性(30)が千畳敷カール、八丁坂で滑落、近くにいた登山者らから駒ヶ根書に救助要請があった。男性は伊那市の病院に搬送され、左肩を打つ軽傷。

2016年2月27日午後1時19分頃、東京都日野市の女性(26)が滑落。同行していた男性(日野市、30)が救助に向かうも濃霧により救助要請。2人にケガはないとみられる。

また、同日、午後3時33分頃にも、横浜市の公務員男性(23)が滑落。アイゼン、ピッケルを紛失し、救助要請。軽傷とみられる。
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よかった、死者が出なくって。

(2016/2/27)

コメント

真冬の木曽駒お疲れ様でした!
またまた寝過ごしてしまったんですね(^_^;)
でも今回は神様が味方してくれた?のか、無事予定してたバスに乗れて良かったですね。
それにしても、真っ白なカールは見事です!
その光景だけでもうっとり〜‧˚₊*̥(* ⁰̷̴͈꒨⁰̷̴͈)‧˚₊*̥
乗越浄土から上は、やはり相当キツイんですねー。
目の前で滑落なんて…( ゚艸゚;)怖っ
すっぱり諦めて正解ですよ〜!
木曽駒も宝剣岳も、また次回リベンジですね。
No title
mokos殿

疲れましたよ、ほんと。
翌日の天気が悪い予報だったので土曜日に行きましたが、終わってみると翌日はおだやかな晴天だったようで。。。。ありゃっ。

のっこしは本当にびっくりでした。
あまりに風ゴーゴーであまりに寒むくて死にそうでした。
私でも飛ばされそうでしたので、細いmokosさんなら、100mぐらい飛ばされて、(追い風参考未公認)世界記録ですわ。

それにしても、あぁあぁです。
もう雪山シーズン終わりかよって感じで、不完全燃焼です。

夏に向けて、いくつか登りたい変な山ピックアップしたので、それはそれで楽しめそうです。

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